世界規模に可能性を広げるという視点からグローバル人材を定義する

グローバル化とは「情報・科学・技術の発展・革新及び経済成長にともない、世界は緊密化し相互依存性が高まることによって社会の複雑性・多様性・不確実性が深化した」国内外を問わず深化を続ける社会現象だと定義しました。

複雑・多様・不確実という言葉は、否定的な響きを持っていますね。どんどん生き難い世の中になっていくということなのでしょうか。昨今の日本の子どもたちが置かれた現状を考えるとその様な暗いイメージとも重なるのかも知れません。「未来に希望が持てない」と言う表現を良く耳にしますね。

政府が2014年6月に発表した2014年版「子ども・若者白書」の世界7カ国の若者の意識調査によると、「自分の将来に明るい希望を持っているか」との質問に、「希望がある」「どちらかと言えば希望がある」と答えた人が日本は61.6%にとどまり7カ国中最低で、他の6カ国(82.4%~91.1%)を大幅に下回った。また、「40歳になったときに幸せになっている」と答えた人は日本が66.2%で最下位。他の6カ国は81.6%~87.4%だった。「自分自身に満足している」「自分には長所がある」と答えた割合も、日本は7カ国中最低。自分に自信が持てず、将来についても悲観的な日本の若者像が浮き彫りとなった。

※時事ドットコム(2014/06/03-08:48)から抜粋

先進国は成長期を終え、経済的に成熟・衰退の時期にあることを考えれば子どもたちが夢を描きづらい時代であることは間違いありません。

先日私たちの会社でインターンとして働く二人のフランス人(大学学部生)に同様の質問を投げかけました。「フランスの若者は、自国の将来を明るいと考えているか?」 答えは、「ほとんどの若者は自国の将来は衰退しかないと考えている」というもの。同時にフランスで行われた調査結果も引用しながら、いかに悲観的に考えているかを説明してくれました。次に投げかけた質問は、「グローバル化は自分たちにとってプラスかマイナスか?」。二人の答えは明確に「プラス」。その理由を次のように説明してくれました。「私の友人の多くはフランスを離れてイギリスやオーストラリア、米国で仕事をしています。フランス国内で自分の能力を活かす仕事を見つけるのは年々難しくなっています。しかし、グローバル化の恩恵により、自分たちの仕事の場を国内に限定する必要がありません。世界に活躍の場を求めることができる時代に生きていることは自分たちに与えられた機会だと思います。」この白書の質問は、「自国の将来」ではなく「自分の将来」です。自国の将来と自分の将来がおおよそ等しいものと考えるのであれば、フランスの調査結果は違ったものなのかも知れません。しかし、世界と自身の将来を等しいものと考えることができる人たちは、自身の将来を希望に溢れるもの、様々な未知の世界に挑戦できる機会と捉えるのかも知れません。

皆さんはこのコメントをどう受け止められたでしょうか。どの位の日本の若者がこの様に考えているのでしょうか。グローバル人材を「世界が緊密化し相互依存性が高まる」時代に活き活きと活躍する人と定義するなら、その様な思いを持つ子どもたちを私たちはどの程度育てることができているのでしょうか。

2001年度から3年に1度学校法人産業能率大学が実施する「新入社員のグローバル意識調査」の2013年度の結果は非常に興味深い内容でした。この調査の中で特に目を引いたのは、海外で働きたいと思うかを、「どんな国・地域でも働きたい」「国・地域によっては働きたい」「働きたいとは思わない」の三択で尋ねた調査の結果です。左のグラフの黒と灰色の比率の変化に着目して下さい。「どんな国・地域でも働きたい」と答えた比率が12年間で12.2%増加している反面、「働きたいと思わない」比率は29.1%も増えています。二極化も懸念ですが、それ以上にグローバル化を可能性と捉えないと思えるような状況が一番の課題だと感じるのは私だけでしょうか。

企業もこのことに危機感を感じているようです。先般、秋田の国際教養大学を会場に行われた、グローバル人材育成教育学会第2回全国大会(2014年11月15日、16日)の招待講演「企業が求めるグローバル人材」でNECの方が「英語力を中心に海外要員を人選していたが間違いであることが分かった。一人でも異文化・異分野でも戦えるガッツがある人を選びトレーニングを行うようにしています」とおっしゃっていました。

これらのことから、グローバル人材に求められる基本姿勢は「一人でも異文化・異分野でも戦えるガッツがあること」と言えるのかも知れません。さまざまなグローバル人材の定義が存在する中、私はBill Hunter らが2006年にASIE Journal of Studies in International Education, 10(3), 267-285. で発表した 、グローバル人材の定義「柔軟かつ積極的な文化的規範や常識などの知識獲得の姿勢をもとに、これらの知識を相互交流やコミュニケーションに活用し、異なる人々との恊働を実現できる人」(筆者訳)が一番すんなりと入るのですが、NECの方がおっしゃるように「ガッツがある人」とするとさらに分かりやすいですね。

細かいことはさておき、異文化・異分野でやってやるぞ!と言う意欲を育てているかを問わなくてはいけませんね。

(第2回おわり)

次回は、グローバル人材に必要な素養をもう少し掘り下げてみたいと思います。

北 浩一郎Koichiro kita

(株)LbE Japan代表取締役
グローバル人材育成企業