パレーゴを使ったオーストラリア同世代との語学学習交流

千葉県立印旛明誠高等学校 英語科教諭:鈴木朋夫先生

実践の展開

日本語を勉強しているオーストラリアの同年代の生徒と、コミュニケーション型語学学習ツール≪パレーゴメール≫を通じて交流する。≪パレーゴ≫では、日本語と英語を併記したメールをやりとりし、安全な環境のもと、オーストラリアの同年代の子ども達とのオンライン交流を通じて、楽しみながら語学と異文化を学ぶことができる。

1. ≪パレーゴ≫に登録し、友達を探す

プロフィールページに自分の趣味や関心のあることなどを登録し、先方の登録情報から、共通の話題で交流できそうな人を検索する。

2. メールを作成し、送信する

≪パレーゴ≫でのメッセージ作成方法は、”パレット”と呼ばれる機能を活用するものと、フリーメッセージで直接入力するものとの2通りある。”パレット”には「スポーツ」や「学校」、「音楽」など話題のカテゴリーごとにサンプル文があり、英語と日本語が対になった単語が順不同に提示される。それを適切な語順に並べ替えたり、単語の入替えや動詞の変形をしたりすることで、一文一文編集ボックスに挿入する。その際に文法的な間違いがある場合には、編集ボックスに挿入できない。フリーメッセージで記入する場合には、そうした手続きは不要で、自由英作文という形で一文一文メッセージを作成する。メッセージ完成次第送信する。

3. 交流活動の様子

まず、JTBの担当者の方に来校していただき、≪パレーゴ≫の使い方について、1,2年全クラスに対して説明を受けた。1単位時限50分でプロフィールページ作成、友達探し、メッセージ作成、送信まで、ほぼ全員が到達できた。それ以降は、放課後、コンピュータ室(生徒用PC42台)の開放、英語の授業の活用、夏休みの課題を通じて、生徒に交流を促している。
生徒の取り組みは教員側の予想をはるかに超え、スマートフォンや自宅のパソコンで返信チェックをしたり、頻繁にコンピュータ室を訪れメッセージ作成を行ったりと、自主的、積極的に交流する生徒も多い。
また、返信が来ている場合だけでなく、メッセージを作成すること自体を楽しんでいる様子もうかがえる。それは多分に、「楽しみながら学べる」≪パレーゴ≫のシステムに由るところが大きいと思われる。

実践のポイント

・文字を使って交流することによって有意義なコミュニケーション体験ができる

英語教育が「コミュニケーション重視」と言われて久しい。しかし、その場合の「コミュニケーション」は「会話ができること」とのみ受け止められている場合も多い。そのように捉えてしまうことから、教育の現場で様々な問題が生じている。その一つは、「コミュニケーション能力」=「円滑に会話を成立させること」としてしまい、意思疎通になんらかの障害があった場合に何の対処もできなくなってしまうということである。「コミュニケーション能力」とは本来、なんらかの障害が原因で意思疎通が不調を来している場合にこそ、それに対処すべく発揮されるものである。因みに、ALTとの授業では、生徒の発話の語法や文法上の間違いにより、会話にずれが生じていても、なんとなく会話が成立してしまい、教師から何の指摘も訂正もないということが間々ある。不調なまま会話が流れているということだ。これは、「会話が成り立っていればそれでいい。発せられた英文の正しさや、その内容などは二の次だ。」という考えの影響だ。≪パレーゴ≫では、文字でのメッセージ交換であるため、大きな誤用は即、意思疎通の不成立に繋がる(”パレット”使用時は入力不能となる)。また、先方から理解不能の日本語が届くこともある。こうした、コミュニケーション障害に直面した時こそ、生徒が「コミュニケーション能力」を発揮し、その能力を向上させる好機である。それはまた、母語と外国語の違いに気付くきっかけにもなる。

・ことばへの「気付き」を体験できる

≪パレーゴ≫の大きな利点は、お互い相手の母語を学ぶ同世代の生徒同士が、その習得途上の外国語を自らの母語と併記して交流するという点である。未修得の外国語であれば、間違いが多くなるのは必然だ。しかし、そこで高度な学びが起動する。多くの間違いがあっても、発する側の母語でのメッセージが対訳のごとく併記されているため、相手が何を言わんとしたかは容易に想像がつく。そして、少しだけ分析的に相手の書いた受け手側の母語の文を見れば、どのような誤用があったのかも分かる。そこから更に進めば、日本語では「は」と「が」の使い分け、英語では動詞や前置詞の語法など、母語故に無意識に使い分けていることも意識に上ってくる。それが外国語を学ぶ目的の一つである「母語への気付き」である。
そして、お互いに相手が書いたメッセージの誤りを訂正し返信するというやり取りが行われるとすれば、それは国際的で協同的な「学び合い」の場となる。その際に行っているのは、母語による母語の訂正であるため、何ら難しいことはない。しかし、容易にできるそうしたやり取りが、双方に数多くの発見をもたらす大きな価値を含んでいる。

今後の発展的指導に向けて

・正しい理解に基づいたコミュニケーションへの積極性が高まる

≪パレーゴ≫での活動において顕著なのは、普段オーラルのコミュニケーション活動では、間違うことを恐れて消極的になってしまう生徒も、自ら発信しようと積極的になるということである。一方、普段からコミュニケーション活動で間違いを恐れず、そのため誤用が目立つ発話が多い生徒も、語法、文法的正しさを追求するとともに、より踏み込んだ内容の文章を書こうとする姿が見受けられる。
これらはともに、オーラルによるコミュニケーション活動では見られなかったことである。

パレーゴ活用の効果

例文として参照し、語句の入替えをしながら活用している”パレット”を、語順や時制、重文、複文、修飾など、使いながら定着するように、カスタマイズする。
取り消し線を入れたり、訂正ボックスを設けたりし、受け取ったメッセージを、訂正しやすく、相手にもわかりやすく提示できるようにする。

本時の学習内容

単元:コミュニケーション英語Ⅰ

・指導目標

オーストラリアの生徒とメールでの交流をすることで、コミュニケーションが不調に陥っている際の対処を経験する。

・評価

意思疎通の障害となっている原因を認識し、その解消のための措置を講じているか。

学習活動 生徒の活動 指導上の留意点
導入 ・検索し、『パレーゴ ログイン』画面へ
・個人ログイン
待ち時間に、天候や、学校行事、時事的なことなどメッセージの話題にできそうなことを提示する。
展開 ・マイページでメッセージを確認
①メッセージが届いている
→相手からのメッセージ読む。
誤用、不自然な表現を訂正する。
→返信を作成
②メッセージが届いていない
→送る相手を検索→メッセージ作成
まとめ ・作成したメッセージを自己評価する
送信
適切な評価ができているか

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