世界規模に可能性を広げるという視点からグローバル人材を定義する(その2)

「異文化・異分野でやってやるぞ!と言う意欲を育てる」ことについて国もいよいよ本気で取り組み始めた気がします。

平成26 年12 月22 日 中央教育審議会(中教審)が「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた 高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について~すべての若者が夢や目標を芽吹かせ、未来に花開かせるために~」という答申を出しました。この答申は主に大学入学者選抜、つまり大学入試の改革を求めるものです。改革なくしてこれからの時代に対応できる人材の育成が困難だとの認識からスタートしています。

新しい入試では次のような表現のもと求められる力を明確化しています。

  • 思考力・判断力・表現力や、主体性を持って多様な人々と協働する態度など、真の「学力」
  • 国、地域 社会、国際社会等においてそれぞれの立場で主体的に活動する力を鍛錬すること
  • 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を養うこと
  • 「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」
  • 積極的に英語の技能を活用し、主体的に考えを表現することができるよう、「書くこと」「話すこと」 も含めた四技能を総合的に育成・評価することが重要
  • 英語のみならず、我が国の伝統文化に関する深い理解、異文化への理解躊躇せず交流する態度などが求められることにも留意が必要

新しい大学入試で明らかにしようとしている力は、初回のコラムで紹介した文部科学省が定義するグローバル人材と重なります。

○「グローバル人材」の概念
要素I:語学力・コミュニケーション能力
要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素III:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

○このほか、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等。

2年目を迎えるスーパーグローバルハイスクール(SGH)は、次年度(平成27年度)の研究開発の実施要項を1月22日(平成27年)発表しました。継続校と合わせて100校程度、つまり50校程度を追加しようと言うものです。

SGH 指定を通じて国は何を目指しているのでしょうか。SGH 構想の概要は次の通りです。
「高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、もって、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的としています。スーパーグローバルハイスクールの高等学校等は、目指すべきグローバル人物像を設定し、国際化を進める国内外の大学を中心に、企業、国際機関等と連携を図り、グローバルな社会課題、ビジネス課題をテーマに横断的・総合的な学習、探究的な学習を行います。学習活動において、課題研究のテーマに関する国内外のフィールドワークを実施し、高校生自身の目で見聞を広げ、挑戦することが求められます。」

つまりSGH 校の使命は、「目指すべきグローバル人物像を設定」、「大学、企業、国際機関と連携して」、「グローバルな社会課題やビジネス課題を横断的・総合的に探究的な手法で解決出来る」人材の養成手法を明らかにすることです。

このことはすなわち、新しい入試を通じて明らかにしようとする求められる人材を育成する手法の仮説を立て、検証し、養成手法を明らかにすることがSGH です。

日本再興のためにはグローバル人材を育成しなくてはならないと言う危機感が伝わってきます。国家の成長のみならず、グローバルな機会を活かすことなく、子どもたちの未来を広げることはできないと考えています。私たち一人一人が危機感を等しく持ち日々考え、取り組まなくては国家も個人も広くグローバル化の可能性を活かすことはできないでしょう。

(第3回おわり)

次回は、グローバル人材に必要な素養を米国でどのように定義しているのか紹介したいと思います。

北 浩一郎Koichiro kita

(株)LbE Japan代表取締役
グローバル人材育成企業