子どもたちの可能性を世界規模に広げる

子どもたちの可能性を世界規模に広げる。この目的達成のために何をすべきか。そう考え、永年様々な実践を行なってきました。その結果たどり着いたのは、「知ること」の大切さです。人は自身が理解できる範囲の中でしか、考え、行動することができません。自分のことを知ること。世界のことを知ること。ちょっとした領域の広がりが、多様な「気づき」につながります。

気づくことは選択肢を広げることになります。広がる経験が「ワクワク感」になるのであれば、さらに広げたいと思う意欲につながり、成長への正の連鎖が起こるのではないかと考えています。また、実体験にまさる成長への道はありません。子どもたちにはたくさんの実体験の機会を与えることが重要です。

目的は可能性を世界規模に広げることですから、ワクワク感も世界規模でなくてはなりません。しかし、誤解頂きたくないのは、国内と海外という構図で物事を考えると言うことではありません。前述の通り、自分を知り世界を知るということですので、子どもたちがどこにいようとも世界と世界の人々とつながっている実感のもと、俯瞰して自身と世界を観ることができれば、所在に関係なく規模の大きな可能性を感じることができるはずです。

自分を知り世界を知る上で「多様性」が重要な役割りを果たします。特に異文化の多様性が与える気づきは子どもたちの領域を劇的に広げます。異文化は自身を客観視し、知的好奇心を大きく刺激します。知らないことを知りたいと感じるのは人の性質です。自身と全く異なる存在が目の前に現れたとき、子どもたちは世界の大きさを感じ、自身を見つめ直し、無限の可能性に気づくのではないでしょうか。

今、子どもたちがおかれた社会は世界がより緊密になり、相互の依存関係が深まる社会です。このことがまさにグローバリゼーション(グローバル化)なのでしょう。グローバル化とかグローバル人材と言う言葉を使うと得体が知れず、混沌としたものになりがちです。ただ子どもたちはますますグローバル化が進展する社会で可能性を模索しなくてはならないのは事実です。

このコラムでは、グローバル化が進展する社会において子どもたちの可能性をどの様に広げて行けるのかを考えたいと思います。

考えを進めるに先立ちこのコラムで使う二つの言葉の定義を明らかにします。一つは、「グローバリゼーション(グローバル化)」。もう一つは「グローバル人材」です。前提は子どもたちの可能性を世界規模に広げるということですので、その視点からそれぞれの言葉の定義を行ないます。

=世界規模に可能性を広げるという視点からグローバル化を定義する=

米国にThe Partnership for 21st Century Skill(P21)sという非営利団体があります。

※The Partnership for 21st Century Skills
http://www.p21.org

この団体は、米国において教育、企業、自治体及び行政の恊働関係の構築を通じて幼児から中等教育において21世紀型対応力を教育の中心にする触媒になることを目的に活動し、多くの州がその考え方及び手法を採用しています。

P21は目的実現のために4つの基礎力が必要だと提唱しています(4C)。
四つの基礎力とは、批判的思考と問題解決力、コミュニケーション力、創造力、革新力です。
この考え方は文部科学省が定義するグローバル人材ともほぼ重なります。

○「グローバル人材」の概念を整理すると、概ね、以下のような要素。
要素I: 語学力・コミュニケーション能力
要素II: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素III: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

○このほか、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等。

(出典)「グローバル人材育成推進会議中間まとめ」(2011年6月)グローバル人材育成推進会議

この様な基礎力が求められるようになった社会背景をそのものがグローバル化なのではないでしょうか。 P21が提唱する4Cが必要になった背景を私は次の様に考えています。

図1

「情報・科学・技術の発展・革新及び経済成長にともない、世界は緊密化し相互依存性が高まることによって社会の複雑性・多様性・不確実性が深化した」グローバル化(図1)

ここで大切なことは、社会がますます複雑・多様・不確実になっている事実ではないでしょうか。子どもたちはその様な社会にあって、自らの可能性を広げて行かなくてはなりませんので、多くの人にこれまでとは異なる力を身につける必要がでてきたのです。

グローバル化をこの様に説明すると国内海外の対比的な現象でないことが良く理解できます。言葉だけ聞くと、海外や日本と海外との関係だと思いがちですが、グローバル化とは国内外を問わず深化を続ける社会現象だと捉えてはいかがでしょうか。ある意味、「現代社会」と置き換えても良いのかも知れません。

(第1回おわり)

北 浩一郎Koichiro kita

(株)LbE Japan代表取締役
グローバル人材育成企業