北米
アメリカ
アメリカ,もう1つの真実~ラスベガスのマクドナルドが教えてくれたもの~
ラスベガスという名前を聞いたことがないという日本人は少ないだろう。世界を代表するエンターテインメントシティ,ラスベガス。まさにネオンの洪水,「眠らない街」という表現がピッタリだ。
朝まで休むことなく営業するカジノ。これでもかというくらい,きらびやかに輝くストリートのイルミネーション。一体いくらの金額が,毎夜毎夜この街で動いているのであろう。まさにマネーゲーム,金が金を生む不夜城だ。
アメリカを旅していて特に重宝するのが,マクドナルドやスターバックスなどのファーストフード店やカフェで整備されているWi-Fiである。今でこそ日本でもかなりの頻度でWi-Fiが整備されているが,アメリカでは日本よりも相当早くWi-Fiが導入されていた。僕たち旅人は,インターネットに接続しようとすると,マクドナルドやスターバックスに立ち寄ってはWi-Fiを拝借しているのだ。
ある日の夜,ちょっとパソコンを使おうと思った僕は,ラスベガスの中心部からは少しだけ離れたマクドナルドに立ち寄った。時間は深夜の1時。しかし,ここはラスベガス,人通りが絶えることはない。裏通りに行くとちょっと危険な空気が流れているが,中心部を歩いている限りでは深夜でも危険な雰囲気はほとんどない。
深夜のマクドナルド。お客さんの数は多くはなかったが,僕はその光景に目を奪われた。
日本と同じような光景だ。そこには,一番安い商品を1つだけ注文して夜明けを待つ,言葉は悪いのだが浮浪者のような方々が数人席に座っていた。
アメリカのマクドナルドには,日本の100円マックならぬ「Dollar Menu」というものがある。一番安いハンバーガーなどが1ドルのみで注文することができるのだ。それを1つだけ頼み,あとはじっと時が過ぎるのを待つ。
そこには,もう1つのアメリカの顔があった。
アメリカ。世界を代表する超経済大国。GDPの指標では群を抜いてのトップであり,我が日本もGDPの指標で言えばその後を継ぐ第3位ということになっている。
しかし…夜のマクドナルド。そこには経済大国と言われているリアルな共通点が,まざまざと浮き彫りになっていた。
僕がこのマクドナルドで見た浮浪者のような方々は,皆おじさんといった年齢のように見えたが,日本では若者が同じような生活を送っていることもある。恐らく僕が目にしなかっただけで,アメリカでも同じような現状があるのだろう。
パソコンを抱え,レジに並ぼうとする僕。チラッチラッと視線を感じる。
彼らは何を思って僕を見ているのだろう。いや,世界に名立たる観光都市,ラスベガスだ。アジア人だってウジャウジャいる。いちいち気にもとめていないか。でもきっと「金持ちのアジア人がラスベガスに遊びに来て,一休みついでに,ここでパソコンでもしようってんだろうな。」などと思っているんだろう。
アメリカに入って気になること。
実際の話,都市部というのは世界中どこも似ている。整備された道路や公園,その間に同じようなビルが林立し,もちろんそれぞれに特徴はあるものの,非常に似通っていることが多い。
そういったハード面だけを見ると,アメリカも同様に思える。しかし,これまで見てきた先進国と言われる国々とは,ちょっと違った面を感じる。
それが,浮浪者のような人の数なのだ。マクドナルドだけではない。路上にもたくさんの物乞いの人がいる。ラスベガスでもその数は少なくなかった。
そして気になるのは,けが人が多いということと,その人種はほとんどが黒人だということ。なぜそうなってしまっているのか,想像することは難しくない。やはり人種差別的な側面が強く残っているのであろう。一歩大きな通りを外れれば,いわゆる「発展途上国」のような臭いさえ感じた。
この夜マクドナルドで見た浮浪者のような人。みんな黒人だった。僕が座った席のすぐ隣にいた人のテーブルには,たった一杯のジュースだけが置かれ,うずくまるように横たわっていた。
何をするでもなく,ただただ時が過ぎるのを待っている。
たまにチラッと僕の方を見る。何を思っているのだろう。カタカタと,僕のタイピングの音が店内に響く。その音は,彼にも届いていたはずだ。僕が1つだけ注文した「Dollar Menu」のスパイシーチキンバーガーの香ばしい臭いも,きっと彼の鼻にまで届いていただろう。
アメリカ。その本当の顔は,一体何なのだろう。
ニューヨークやサンフランシスコのような華やかな大都会?ラスベガスのようなエンターテインメントの街?セドナやグランドキャニオンなどの言葉を失うような景勝地?マイアミやハワイのようなビーチリゾート?
それとも,毎年多くの人が銃で命を落とすという危険な銃社会?貧しい人は生きていけない,弱者を許さない自由の国?常に戦争をし続けている殺人国家?
それとも,アメリカ人は優しくて陽気?アメリカ人はネイティブアメリカンを虐殺した侵略者?アメリカ人は自由を愛する先進的な国民?数百年の歴史すら持たない文化のない人々?
いろいろな表現や説明が付けられると思うけど,どれが本当のアメリカなのだろう。ラスベガスのある日の夜が,僕にたくさんのことを教えてくれた。
ネバダ州
州都 | カーソンシティ |
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面積 | 286,352平方キロメートル(全米で7位の広さなんだ) |
人口 | 約270万人(全米では35位) |