09

北米

アメリカ

アメリカ

国連本部ほうもんレポート~日本人として国連をどう見るべきか~

 こくさいれんごうつうしよう「国連」。元社会科の教員として,国連にはぜつたいおとずれたいと強く思っていたぼく。念願かなって,ついに足をれることができたのだ。

 国連の内部を自由に見学することはできないので,必ずガイドツアーに参加しなければならない。日本語のツアーもあるにはあるのだが,回数はとても少ない。ということで,ぼくは英語のガイドツアーに参加した。
12時からのツアーだったのだが,参加者は全部で20人くらいだった。ドイツやフィンランド,ほんこん,ジンバブエなど,多種多様な国からの参加者がおり,実にげきてきな時間だった。

ツアーでは,国連が主にどんな活動をしているのかについて説明をしてくれ,合わせてじつさいの議場なども見学することができる。「これが国連か~,へ~!」で終わらせることもできるが,考えさせられる点も多々あった。今回のツアーの中で「日本人として」ぼくが感じた点を,いくつかまとめたいと思う。

① 国連へのきよしゆつきん第2位の国が知られていない。
ガイドのお兄さんが全員にこんなしつもんをした。「国連に最もお金を出している上位3つの国をごぞんじですか?」と。
1位のアメリカはすぐ出てきた。しかし,2位が出てこない。ツアー参加者の多くはヨーロピアンだった。イギリス,フランス,ロシア,ドイツ……いろいろな国名を言うのだが,なかなかせいかいが出てこない。
ぼくは答えは日本であると知っていた。だまって見ていたのだが当たらないので,手を上げて「ジャパン」と答えた。

「なるほど,そんなものなのか」と思った。日本という国が世界で2番目にお金を出しているということはあまり知られていないようだった。別にそれを変な形で知らせる必要なもちろんないと思うが,この事実は世界の方々にもっと知ってほしいものだと感じた。

② 日本とドイツの皮肉な立ち位置。
 ガイドのお兄さんが全員にこんなしつもんをした。「国連の公用語は6つあるのですが,何でしょうか?」と。
おもしろいことに,今度はここでちがった答えとしてドイツ語と日本語がすぐに挙がってきたのだ。これは大変にきようぶかかった。最初のしつもんきよしゆつきんについての話があったので,きよしゆつきん2位の日本と3位のドイツが答えとして出てきたのであろう。しかし,残念ながらこの2つの国の言語は公用語ではない。

日本とドイツは共に皮肉な立場なのである。第二次世界大戦中は連合国(アメリカ,イギリス,フランスなど)に対立した「すうじくこく」として,日本やドイツを「悪い国」としてあつかわれ続けてきた。でも今や,この2か国は世界有数のけいざい大国であり,国連へのきよしゆつきんは2位と3位。りつこうけんを果たしている。
さらにおもしろいのは,日本とドイツは,イギリスCNNのろん調ちよう「世界に最も良いえいきようあたえている国ランキング」の上位にいつも位置している。国連では,まだ「てきこくじようこう」なるものから外されていないにも関わらず,である。

大戦中は共に国土をしよう化されたのに,またたがってきた日本とドイツ。それなのに,この2か国はいまだに「敗戦国」なのである。そもそも国連の英語名「United Nations」は,ちよくやくすると「連合国」の意である。日本では「こくさいれんごう」とやくしているが,そもそもの意味合いはちがうということを,ぼくたち日本人は知っておくべきだろう。

③ 日本にはやるべきことがある!
 国連の中には,ながさきへ投下したげんばくによってはいめんけてしまったぞうが置いてある。かくおそろしさを伝えるため,国連にてんされているのである。
世界でゆいいつかくへいが使われた国,日本。そのがいしようちようが,かくへいゆいいつ使用した国,アメリカにかざられているのだから,なんとも皮肉なものである。
しかし,今の日本は平和利用をしていたはずの原発で大問題をかかえてしまっている。かくの兵器利用によってがいを受け,さらにかくの平和利用によってもがいを受けてしまっている国,日本。そんな日本だからこそ,世界に向けてやるべきことがたくさんあるはずだ。

④ 言うべきことはハッキリ言おう,日本!
 国連は,出入りするしよくいんもあらゆる国から集まっているエリートだし,200近い国がめいしているしきである。さんりようろん,さまざまな意見があるとはいえ,えいきようりよくの大きいしきなのだ。だから,日本もえんりよすることなく言うべきことはハッキリ言わなくてはいけないだろう。そういったところは日本人は苦手なのかもしれないが,こくさい社会ではそうも言っていられない。

この国連の中で日本はどうあるべきか,深く考えさせられた。
最近で言えば,きたちようせんかくかいはつやミサイルのはつしやが大変な話題になっており,それと同時に国連のせいさい決議もいくとなくニュースになっている。しかし,そんな国連のたいおうもむなしく,きたちようせんさらなるちようはつ行動に打って出ている。
 ぼくはここで国連のていしようさんもするわけではないけれど,どうも日本人は「国連ばんのう思考」的なものが強すぎる気がする。国連はたしかに世界のゆくを左右するほどの大きなしきであるし,協力すべきものではあると思うが,もともとは第二次世界大戦の戦勝国のみで作られたしきであり,戦勝国がしゆどうできるように作られているしきであることも日本人として知っておくべきであろう。

 もちろん,いつまでもの大戦の話を引きずっていても前には進めないし,進むべきは平和な世界に向けてである。しかし,そうは言ってもがあってのげんざいであり,そして未来がある。
日本という国の一員として,このこくさいれんごうというしきをどう見るべきなのか。特にわかい世代にこそ,イメージだけでなく客観的な目で考えてほしいと思う。

豆知識

アメリカ
アメリカがつしゆうこく
首都 ワシントンD.C
面積 962.8万平方キロメートル(日本の約25倍もあるよ!)
人口 3億875万人(2010年4月 米国国勢局)
言語 主として英語(だけど,ほうりつ上にていはないんだ)
しゆうきよう 主にキリスト教(信教の自由をけんぽうしようしているよ)

もっと知りたい!

こくさいれんごうとは?
第二次世界大戦をふせげなかったこくさいれんめいの反省をまえ,1945年10月に51ヵこくめいこくせつりつされたんだ。日本は1956年12月18日にめいし,80番目のめいこくとなったんだよ。近年では2011年に南スーダンがめいし,げんざいめいこく数は193ヵこくとなったんだ。
安全しよう理事会とは?
安全しよう理事会(つうしようあん)は,5か国のじようにん理事国(中国,フランス,ロシア,英国,米国)と各いきに配分され,選挙により選出される10か国のじようにん理事国によってこうせいされるんだ。具体的な活動としては,特に冷戦の終結こう,1)国連平和活動(PKO)のせつりつ,2)こくせきぐんしようにん,3)テロたいさく,兵器の不拡散に関するそくしん,4)せいさいの決定等,わたっているよ。
あんを語る上でわすれてはならないのが,きよけんそんざいあんの決定において,じようにん理事国のうちの1か国でも反対があると,そのこうを決議することはできないという,強力なけんげんがあるんだ。
てきこくじようこうとは?
国連けんしよう第53じよう,第77じよう1こうb,第107じようていされている。ないようかんたんに言えば,「第二次世界大戦中に連合国のてきこくであった国が,戦争の結果かくていしたこうに反して,しんりやくせいさくさいげんする行動等を起こした場合,こくさいれんごうめいこくいき安全しようこうは,あんきよがなくともとうがいこくに対して軍事せいさいを科すことができる」といったものなんだ。
つまり,国連けんしよう第51じように定められた「あらゆるふんそうを国連にあずける」というていしばられず,てきこくじようこうがいとうする国が問題を起こしたときは「自由に軍事的せいさいを課すことができる」という考え方になるんだ。