ヨーロッパ
西ヨーロッパ諸国
美しい街並みと温かい無視~西ヨーロッパを歩いてみると~(西ヨーロッパ諸国)
アフリカ大陸からヨーロッパへ。僕はモロッコからジブラルタル海峡をフェリーで越えて,スペインに入国した。スペインで数日過ごす中で感じたこと。それは「ヨーロッパってなんて楽なんだろう!」ということ。そして今回はその「楽」とは何かをみなさんに伝えたい。
きれいだとか電車が時間通りに来るだとか,そういう「楽」な面も確かにある。アフリカ大陸は,ほとんどの国がいわゆる開発途上国なので,衛生面の問題も多いし,電車やバスも古い。息ができないほどの排気ガスをまき散らして走る車もいっぱいいる。それに比べると,アフリカからヨーロッパへジブラルタル海峡を1時間かけて越えただけで,そのすべてが一変する。いわゆる先進国になるのだ。
スペイン,ポルトガルから東へ。フランス,オランダ,ベルギーなどへ僕は旅をしていったのだが,その町並みはまさにヨーロッパである。日本人がイメージする,美しいヨーロッパの世界がそこにはあった。
スペインのバルセロナやマドリードはまさに近代的な都市だし,ポルトガルのオレンジ色の屋根の町並みは大変に美しい。
フランスでは地下鉄が整備され,凱旋門に向かってのシャンゼリゼ通りは世界的に有名な観光地である。
オランダの水路と周辺の町並みはまさに爽快。歩いているだけでとても心地よく,心がいやされるようである。
などなど…例をあげればきりがない。それはまさに,先進国の世界であった。日本で生まれ育った僕にとっては,先進国といわれている国の町並みが,僕にとっての「普通」である。だから,そういう意味でヨーロッパに来てみて「楽」さを感じている面もあった。
トイレはみんな水洗で,1回でしっかりと流れるから清潔だ。駅も自動改札が完備され,ホテルのベッドにもきれいなシーツが敷かれ,南京虫(トコジラミ)をおそれる必要なんてまずない。
しかし,ここで言いたい「楽」さというのは,そういうことではない。ヨーロッパに入ってきて一番「楽」さを感じたこと。それは,僕を「無視」してくれるということ。
これは特にアフリカ大陸の国々に多いのだが,町を歩くたびに,いちいち声をかけられるのだ。それも決して好意的な声かけではなく,差別的とまでもいかないまでも,アジア人である僕をあざわらうかのように声をかけてくる。
いちいち,どこに行くにも何をするにも「チャイナ!」(東アジアの顔つきの人間は,彼らから見ればみんな同じ顔に見える。圧倒的に中国人の数が多いので,総称して,チャイナといわれることが多い。)だの「サディーガ!」(アラビア語で友達という意味らしいのだが,特にスーダンではやや差別的な意味を含めてサディーガと声を掛けるらしい。現地で活躍する青年海外協力隊の方が教えてくれた。)だの「チンチョンチャン!」(中国語の発音を真似して,アフリカ地域の子どもたちはよくアジア人である僕らにこの言葉を投げかけてくる。当然からかってくるような意味合いである。)だの,声を掛けてくるのだ。
僕はただ一人の人間としてその場にいたかった。しかし,そうはさせてくれないのだ。いちいち,僕という人間を「無視」することなく,ちょっかいを出してくる。そしてそれは,正直肯定的な意味合いではないのだから,当然イライラもするし,嫌になってくる。ただ,こう書いてしまうとアフリカの人々が,嫌な人のように思えるかもしれないが,そんなことは決してないので,そこは誤解のないように付け加えておきたい。
スペインに入り,町を歩いていて一番驚いたことは,そのことだった。誰もが僕のことを無視してくれる。大人はもちろん子どもも,すれ違いざまに投げ捨てるように声をかけてくるような人は誰もいない。僕のことを 一人の人間として「無視」してくれるのだ。
これには深い背景があると思う。イスラム諸国の人々やアフリカの人々は,とにかく人なつこい。だから,差別的な意味合いで声をかけている人もいれば,単に外国人が興味深くて声をかけてくる人もいる。そこは国民性,民族性なので何とも言えないところがある。そして,これはあくまで僕の考察ではあるのだが,教育の不足からやってくる差別心や偏見についての問題があると思う。
いわゆる開発途上国と呼ばれている地域では,他とは比べられないほどに教育が不足しているのだ。人間の自制心や他を思いやる心は,教育によって育まれる側面は大きい。教育が不足していることで,差別や偏見が生まれてしまうのであれば,それは大問題である。
いわゆるヨーロッパ,特に西ヨーロッパといわれている地域はまさに先進国であり,さまざまな教育が行き届いている。それゆえに「心地よい無視」が生まれるのであれば,その差は地球に住む一員として,僕たちすべての人間が考えなければいけないことである。
数か月に渡ってアフリカを旅し,それから西ヨーロッパに入ったので,あまりの差に多くのことを考えさせられた。経済成長だけを追い求めていると,地球の未来が大変なことにななってしまう。僕たちはどのような世界を目指していくべきなのか,1人ひとりが真剣に考えていく必要があるだろう。
地理的な区分で言うと,西ヨーロッパに含まれる国は以下の12か国なんだ。
アイルランド / アンドラ / イギリス / オーストリア / オランダ / スイス / ドイツ / フランス / ベルギー / モナコ / リヒテンシュタイン / ルクセンブルク
主要都市 | ロンドン(イギリス),パリ(フランス),ベルリン(ドイツ)など |
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宗教 | 主にキリスト教 |
日本との関係 | 全般的にとても良い関係だよ。 官民共に交流が続けられていて,経済面でも文化面でも良い関係を築いているんだ。 特にイギリスやフランスは海外旅行先の人気ランキングの常連で,毎年多くの日本人が訪れているね。 |
- ▼EU(ヨーロッパ連合)
- 1992に生まれた国際機構のことだよ。欧州連合とも呼ばれるね。EU圏内は外交,安全保障,経済・通貨,社会の各分野の統合により,EUに加盟している国同士の障壁を撤廃したんだ。貿易の自由化を実現するとともに,2002年には通貨「ユーロ」が発足。現在アメリカに次ぐ一大経済圏を形成しているよ。
- ▼イギリスのEU脱退
- 2016年6月23日に行われた国民投票で,EU離脱への投票がEU残留への投票を上回ったんだ。投票結果は,離脱支持51.89%,残留支持48.11%というわずかな差だったんだよ。そして2017年3月29日,イギリスは正式にEU離脱を通告。国際社会に大きな衝撃をもたらしたんだ。